前回の記事はエアコンディショナーの購入時に投稿したので、設置が完了次第試用して記事にするつもりだったのだが、7月5日頃を境に気温が20℃前後で推移してエアコンディショナーが不要だったため記事にするのが遅くなってしまった(※例:7月のチューリヒのデータ。華氏で表示される場合は右上のドロップダウンメニューで「℃, km/h」を選択して下さい)。8月に入り再び25度以上の夏日が続くようになったので記事にしようと思う。
配送
後編では、まず前回の記事でカバーし忘れた内容に重量や配送・設置の話題から始めようと思う。
日本で一般的なエアコンディショナーは室内設置の本体と室外機に分割されているが、筆者が購入したのは可搬式の一体型で、つまり本体と室外機に相当する部分が一体化されているので相当な重量になる。筆者が購入したのは比較的大型(14000 BTU/h)のため梱包を含め38kgに達するが、やや小型(10000 BTU/hクラス)の製品でも概ね25~30kgにはなるので、もはやエアコンディショナーという装置の宿命と言えるだろう。
ここでの問題は、一般にスイスを含め欧州の運送業者は有料オプションを選択しない限りは玄関先までの宅配(アパート等の集合住宅の場合は建物の玄関先まで)となるため、配送された場所から設置場所まで自力で運ぶ必要があることである。これは買った商品がテレビだろうがエアコンディショナーだろうが違いは無く何であれ基本的には配送の中に部屋までの配送は含まれていない場合が多い。例外は比較的高額の店で家具を買う場合ぐらいではないか。いずれにせよ購入時に何処まで込みで何処からオプションか確認が必須になる。
今回、筆者の場合はなぜか運送業者がアパートの自室玄関前まで運んでくれたため事なきをえたが、近所に住む知人に手伝ってもらうとか事前に決めておく必要がある。
設置
もし自宅まで無事にエアコンディショナーを運搬できたとしても、欧州では日本ほどエアコンディショナーが普及していないため、設置は簡単にはいかない。
まず、電源の問題がある。
エアコンディショナーが普及していないということは、専用のコンセントも宅内に存在しないという意味でもある。2000年以降に建てられたような日本の住宅なら窓近くの壁の上部にエアコンディショナー専用のコンセントとダクト用の穴があらかじめ準備されていたりするが、それが無い。
例えば、筆者宅の分電盤を見ると部屋毎などの単位で容量が2400Wとか3600Wだとか決まっているがエアコンディショナー用の配電は存在しない。すると、エアコンディショナーは消費電力が大きいので容量が足りない可能性が出てくる。例えば筆者が購入したOlimpia Dolceclima Air Pro 14 HPの場合だと冷房時の消費電力が最大3520 Wだそうで、筆者宅のリビングルーム+オフィスは容量が合計で2400 Wなので設定次第ではブレーカーが落ちる可能性がある。筆者宅の場合は比較的容量に余裕があるキッチンから電源を取ることで解決できそうだ。
次に、欧州の住宅はエアコンディショナーの設置を想定していないと思われ、窓の形状もエアコンディショナーの排気ダクトの設置に適していない。このような場合、日本ならダクト用の穴の開いたパネルを用いるが、欧州の場合はそれも上手くいかない。
どういう事かというと、日本の家の場合は横にスライドさせて開けるアルミサッシ窓が多く、またYKK APやLixilといった大手メーカーが存在し事実上の標準規格が存在するため、仮にダクトが準備されていなかったとしても排気ダクト用のパネルを窓枠に嵌め込む配管が可能である(参考:Amazon.co.jp)。
しかし、欧州の住宅の窓は窓の一辺が蝶番で固定されて斜めに開くタイプが多く、また、欧州では恐らく窓の大きさに標準規格が無いようで(?)排気ダクトを配管する際の窓の窓枠の隙間は住宅によってバラバラになる。そのためアルミ製や樹脂製のパネルは使用不可能で、ナイロン製の布で窓の隙間をシールすることになる(参考:Amazon.de)。
このシール用の布だが、雨水や虫などの侵入こそ防げるものの、布なので密閉できるわけではなく室内外の空気の行き来まで防ぐことはできない。ただ、排気ダクトの向きを固定できるため、排気ダクトを通る高温の空気が屋内に戻ることを防ぐことはできる。
ここで悩ましいのはシール用の布はベルクロテープや両面テープでの窓枠への固定が想定されているのだが、賃貸住宅の窓枠(欧州の窓枠は木製が多い)にテープで貼るのはあまり気が進まない。かと言って、試しに養生テープで固定してみたところ粘着力が弱くエアコンディショナーのダクトからの強力な噴射によって布が外れてしまった。やはりベルクロテープや両面テープでの固定しか選択肢は無さそうだ。
使用しての感想
そもそも欧州は日本より湿度が低いため、効果を実感するのは難しいかもしれない。
例えば今日(8月9日)は外が摂氏34度・湿度37%だったのだが、直射日光の差さない屋内に入るだけで気温は摂氏28度まで下がる。温暖ではあるが湿度は高くないため不快ではない。
御存知の通り、体感の気温は湿度に大きく依存している。AccuWeather社のRealFeelが有名だが、NOAA(米国海洋大気局)のHeat Indexなどもある。仮に気温が摂氏34度でも、日本でよくある湿度80%だとHeat Indexは「摂氏52.2度」・湿度37%だとHeat Indexは「摂氏34.7度」なので同じ気温でも随分と体感温度は違ってくる(参考:Heat Index Calculator)。
上述の前提で、稼働率低め「自動モード」「24.0℃」設定で稼働してみた。
上述の通り屋内の騒音はそれなりに煩く、ファンの回転速度を落とすことで騒音は減らせるものの今度は部屋全体の冷却が難しくなるためバランスが難しい。ただ、屋外から確認しても御近所迷惑な騒音は聞き取れず、早朝や深夜でも使用できそうなのは良かった。
付加機能
筆者が購入したOlimpia Dolceclima Air Pro 14 HPに限った話ではないのだが、昨今の欧州で販売されているエアコンディショナーはWi-Fi対応機が多く、スマートフォンにアプリをインストールしてリモートコントローラー代わりに使用できる。正直なところ20~30年ほど前に話題になった(?)「インターネット接続対応の冷蔵庫」と同じで利便性はよく解らないのだが、睡眠時の温度・出力設定など旧式のリモートコントローラーでは不可能そうな緻密な設定が可能なのはアプリならではだと思うが、個人的にはあまり必要そうにない。